ヨガ、ストレッチポールの講師として運動指導歴10年以上のキャリアを持つ田中ゆりさん。
その穏やかな笑顔と雰囲気からは想像がつきませんが、過去には、それなりにいろんな壁にぶつかることもあったという。ヨガやマインドフルネス(心理セラピー)の実践を通して得たことが、自身の人生に大きく影響している。だからこそ、同じような経験をしている人の伴走者のような存在でありたいと言う。「心と身体の調和」をテーマに活動を広めている。
田中 ゆり / Yuri Tanaka
ヨガ、アクアビクスインストラクター。心理セラピスト、心理サポーター。マインドフルネス瞑想、素質論アドバイザー。Studio lilie(スタジオ・リーリエ)代表。
笑顔と元気、癒しと優しさを伝える活動をモットーに、ヨガ、ストレッチポールなどのインストラクターの活動に加え、ストレスや悩みを抱える人々の心の健康をサポートする心理セラピストとして、自身が運営するスタジオや各方面のイベントなどで活躍する。
ありのままの自分、そしてインストラクターの道へ
――まずは、この職業を選んだきっかけを教えてください。
仕事に就いたきっかけを聞かれることもありますが「実は決定的な理由があまりないんです」と話す田中さん。
小さい頃から、スイミングを習っていたこともあり、なんとなくですが、将来は運動の分野で自分だからこそできることをやってみたいと漠然と思っていました。就職しフィットネスクラブで働くことになり、アクアビクス(水中トレーニング)を担当することになったのですが、なかなか最初の頃はインストラクターとして自分の形を見出せなくて頑張れない時期がありました。そこで仕事や私生活の悩みで気持ちが落ち込んでいた時期に、ヨガの教室に通いはじめ、だんだんとヨガの奥深さに魅了されるようになりました。
――ヨガと出会い、続ける中でどんな魅力を感じていましたか?
当時の私はヨガのことを全く知りませんでしたが、教室に通う中でヨガは心や身体、自分自身のことを探究していることが少しずつ分かるようになってきたんです。ゆったりと身体を動かすことで自分の癖や習慣に気づき、リラックスさせたい部分を自分の呼吸を整え、感覚を使いながらほぐしていくことはとっても心地よく感じます。
そして目を閉じ、自身の内側へと向き合い、心を穏やかに、呼吸も穏やかに、自身を見つめ直したときに、悩んでいたことや、慌ただしく感じていた心が少しずつ静まっていきます。
“自分のことを知り、自分自身で癒してあげる”そんな一つ一つの変化を感じることが私は好きなんだと思います。
自分が感じた心地よさを、関わる人たちのために
――インストラクターとして、伝えていきたい魅力とは?
「頑張っても変えられないことがある」ということを経験してきたからこそ、ヨガやマインドフルネス(心理セラピー)の実践が自分の捉え方や扱い方を変えるためのヒントになり、私にとって大きな軸になっています。
インストラクターとして、私が知っていることはもちろん惜しみなく出したいと思います。でも、「ああ、これだ」という答えを持っているのは自分であって、受け取ったことをどう解釈し取り入れるのかも自分次第になると思います。だから何より、一緒に同じ時間や空間の中にいて、ただ一緒にいることそのものを大切にしたいです。ヨガのレッスンでもそうですが、ひとりじゃなくて、自分の隣にも人がいる心強さや安心感を、少しでも感じてもらえたらうれしいですね。
――この仕事ならではの難しさはありますか?
インストラクターは会話やレッスンを通し、お客様の身体や心に寄り添うことができる仕事だと思います。人の役に立っていることを深く感じられる仕事である一方で、時には、なかなか自分の伝えたいことが伝わらないこともあります。「どうして伝わらないんだろう?」と言葉で表現する難しさを感じる場面こそ、お互いが理解し合える穏やかな気持ちにさせるような時間が必要なのだと思います。
私自身もヨガによって心が安定することを何よりも実感していますし、レッスンを受けてくださるお客様にも心や身体の調整ができる、心地よさを人と分かち合える体験を目指しています。
思いやりや労りの気持ちを自分にも向けてあげること
――これからヨガや心理セラピーを学びたい方にアドバイスするとしたら何かありますか?
ヨガも心理セラピーにもたくさんの知識があります。もちろん、決まった流れにそってレッスンしたり、お客様が何の答えを求めているのかを大切にすることも大事なことですが、それを頑なに守ろうとすると苦しさが生まれてしまうことも実感してきました。大切なのは、そのときどきの生活に寄り添った形を大切にして、無理なく続けることなのだと思います。
――田中さんにとって、自分と向き合うとは?
私自身、特に心の面をサポートする上でお客様との会話を大事に、今の現実と一緒に向き合うことを実践しています。感情と向かい合い、身体を動かすことでたくさんのエネルギーを感じることができます。いつもしないことをすると、少しだけ楽しさも増えていき、そして、自分の目の前に起きることが、少しずつ変化したり、時には工夫し変えてみるという視点の大切さも教えてくれていると思います。
――最後に、田中さんからのメッセージをお願いします。
「こんな自分でもいいよね。」「十分頑張っているよね。やれること精一杯やったよね。」と自分自身の感情にOKが出せる、包み込む姿勢が芽生えるようになれるといいですね。もちろん、周りの人に優しい言葉をかけてもらうことも良いけれど、それだと一時凌ぎになってしまい、結局また不安になるという悪循環もあります。まずは、自分が自分の1番の味方になってあげて、思いやりや労りの気持ちを向けてあげることが大切です。
私は人が好きで、笑うのも大好きで、出会えたみんなと今ある幸せに感謝をし、自分のための時間を共に感じていけたらと思っています。
笑顔と元気、癒しのある「Studio lilie(スタジオ・リーリエ)」。スタジオに差す日差しとともに、ご自身と向かい合いませんか。
――田中さん、ありがとうございました!
※上記記事は2023年9月に取材したものです。時間の経過による変化があることをご了承ください。