今回のゲストは小妻時計修理店 Bleriot’s(ブレリオ) さん。

都城市の中心市街地にある商業施設「オーバルパティオ」に店を構える『小妻時計修理店 Bleriot’s(ブレリオ)』は主に機械式時計の修理を行っているお店です。主に取り扱っている高級時計は、緻密な仕組みと優れた職人技術によって生み出された芸術品であり、修理する職人にも極めて高いスキルが要求される。そんな厳しい業界で独立し腕を振るう「小妻 優太 さん」にお話を伺いました。

こづま ゆうた / yuuta koduma
小妻時計修理店代表

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現在の仕事に就いたきっかけと店名の由来

――現在の仕事に就いたきっかけ・これまでの経歴を教えてください。

 「手に職を付けたい」
 二十歳の頃、経験もなくゼロからスタートして世間に通用するような職はないか。そんな気持ちで職探しをしていた際に時計修理士を知りました。小さな時計の中に使用されているパーツは100個にもおよび、それを精密な動作で修理していく。まさに職人であり、人でなければできない仕事であるところに惹かれその道に進むことにしました。

 ゼロからのスタートですからまずは学ぶ必要があり、専門学校へ通うことになります。修理ということでもちろん手を使うことも学びますが、100個あるパーツの名称、それがどのように作用しているのかそれがしっかり頭に入っていなければ修理を行うことはできません。技術を身に着けていくとばかり思っていた私はかなり苦労しましたが、卒業して宮崎や東京の時計修理会社にて修行を積み技術と知識を身に着けることで自信となっていきました。

 
 
 
 
 
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Bleriot’s(ブレリオ)(@bleriots0819)がシェアした投稿

 修行中の20代の頃の私には尊敬する人が一人いました。それは皆さんもよくご存じappleを創業したスティーブ・ジョブスです。
今では世界的企業であるappleも最初はガレージカンパニー(自宅ガレージでの起業)でした。彼にあこがれていた私は、自分の身一つで生業を立てよう、そう思い立ち、地元都城にて独立することとしました。

そして事業が波に乗ってきたところでオーバルパティオに店を構え時計の修理に励んでいます。

――お店の名前の由来を教えてください。

 店名についている「Blériot’s(ブレリオ)」は、若い頃にイギリスを旅した際に偶然見つけて宿泊したホテルの名前からいただきました。
 意味としては人名であり、初めてドーバー海峡の横断飛行を成功させたパイロット ルイ・ブレリオが由来です。ただフランス語由来のアキュート・アクセント(é)、英語由来のアポストロフィー(‘s)が入り混じっていて、両方の言語を理解している方でも混乱する不思議な書き方なのだそうです。そんなこともあり自分がこれまで出会った中でも強く印象付けられた単語でした。
 その後、独立してお店に名前を付けることになった際、思い浮かんできたのがこの「Blériot’s(ブレリオ)」であり、何故だかお店の名前として自分の心にしっくり来たのでした。

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一人で営むプレッシャーとの闘い

――時計修理店のお仕事について教えてください。

 仕事のほとんどは修理のため時計と向き合っている時間です。ただ私は一人でやっているため、お客様対応に発送作業、修理の依頼をいただくための営業や経理作業等も行っています。

 ありがたいことに現在多くの依頼をいただけているので、多い時で月に100本ほど修理を行うこともあります。毎日のように日を跨ぐまで修理をしていたりするので、1日が40時間あればいいのになんて思うこともしばしばです。

――苦労したことや乗り越えてきたエピソードがあれば教えてください。

 機械式時計、その中でも高級時計は修理において一つのミスが不可逆的な故障へとつながってしまうことがあります。何百万とする時計がその価値をなくしてしまうのです。独立する前、大きなミスをした経験もありましたが、会社に勤めていたため守ってもらえていました。しかし独立した今、誰も守ってはくれません。一つのミスが何百万の負債につながってしまう可能性があるのです。また金銭的な損失だけでなく、例えば大きなゼンマイ式壁掛け時計を修理するとなると、中に入っているゼンマイの板は数メートルの物が入っており、扱いを間違うと大けがを負ってしまう可能性もあったりします。日々そんな緊張とプレッシャーを乗り越えながら仕事をしています。
 これはこの業界で独立することの難しさにもつながっていて、専門学校に通っていた際、同級生は100人ほどいましたが、現在その中で独立して修理師をやっている人間は自分を含め2人しかいません。

 適度な仕事のプレッシャーは、よい緊張感をもたらしますが、それが毎日続くと、ストレスが溜まります。ですから、仕事柄よく行く東京で、新しくできたカフェ巡りなどをして癒しと刺激、インスピレーションを得ています。日々新しいお店がオープンする東京はセンスの競いあう場でもあり、見聞きするだけでなく実際に行ってみることで自分の中で新しい発見があります。今は久しぶりに欧州に旅に出ようかとも考えています。普段東京などで得る刺激よりも、もっと大きいドキドキやわくわくを補給したいんです。

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都城というまち、若者のあつまるところ

――最後に都城市へのメッセージをお願いします。

 元々地元である都城で独立しようと思ったのは、同業他社が多くなく参入における障壁が少ないことが理由で、特に思い入れなどはありませんでした。そんな私が、中心市街地のオーバルパティオに店を構え様々な人たちと関わりまちを見るようになって思ったこと、それは、まちなかであっても図書館かイオンなど以外には本当に若者が少ないなということでした。

 ですが、昨年ブレリオの隣に無人の古着屋販売店「Monkey.punch(モンキーパンチ)」さんが出来少し変わった印象を持つようになりました。自分のお店の前に中高校生の自転車が止まるようになり、何かと思えばモンキーパンチさんで古着を見ていたのです。これはつまり学生がいないのではなく、行きたくなるような場所が少ないとわかったと同時に、「都城でも学生が集まる場所は作れる」ことがわかりました。これはすごいことです。

 同じように学生の集まれる場所を作りたいそんな思いでモンキーパンチさんの横にカフェスペースの「Café de MONACO(カフェドモナコ)」がオープンし私も関わらせていただいています。フランス地中海のモナコイメージした白を基調とした柔らかい雰囲気のお店です。メニューはコーヒーのみ、食べ物の持ち込みはOKですので、向かいのパン屋さん「パンとお菓子 QUiTTERiR キトリー」さん等まちなかのお店でテイクアウトしてゆっくりできる場所として使って欲しいと思っています。

皆さんお越しをお待ちしてます。またお子さんにもこんなお店ができたらしいよとぜひお伝えください。

――小妻さん、ありがとうございました!

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※本記事について、時間の経過による変化があることをご了承ください。

Bleriot’s(ブレリオ) 小妻時計修理店