創業インタビュー連載企画
まちの主人公たち
第1回「こはるびより」新山 美穂さん

 

まちのあちこちで、静かに、でも確かな情熱をもって動き出している人たちがいます。
こだわりのつまったお店、店主のセンスが光るお店、笑顔があふれるお店――すべてのお店に、創業までのドラマがあります。

本企画では、まちなか近隣でお店を構える個人事業主の方々にインタビューを実施。
「どうしてこの道を選んだの?」「一歩目を踏み出したきっかけは?」
リアルな声とともに、起業という挑戦の裏側を覗いてみませんか。

 

 

焼き菓子を通して、「体に優しく、心も温まるおやつ」を届けたいーー。
そんな想いで都城市オーバルパティオ内チャレンジショップに店を構える
焼き菓子店
「こはるびより」のオーナー、新山 美穂さんにお店への想いやこれまでの道のりについてお話を伺いました。

 

お店のコンセプトと商品へのこだわり

 

 
 
 
 
 
この投稿をInstagramで見る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

こはるびより(@koharu_biyori_mini)がシェアした投稿

 

現在のお店の事業概要について教えてください。どのような商品を販売されていますか?

焼き菓子が中心です。だいたい5種類くらいの焼き菓子が並び、内容は季節やその時に手に入った食材によって変わります。
定番メニューとしては、キャロットケーキとシフォンケーキを置いています。その他に、スコーン、マフィン、レモンケーキ、クッキーなども提供しています。

また、オーバルパティオ内にある「カフェ・ドゥ・モナコ」さんにもお菓子を置かせていただいています。
こちらでイートインされる際には、お皿に可愛く盛り付けて提供してくださるので、カフェ気分でゆったりと味わっていただけるのも魅力の一つです。

 

特に注目したいのが「おつまみスイーツ」ですね!これは独自のアイデアだと伺いました。

そうです、独自のアイデアです。主人と晩酌をするので、一緒に楽しめるように、「甘いお菓子だけよりも、しょっぱいものもあってもいいのかな」と思って考案しました。
色々なしょっぱい焼き菓子を試した中で、一番先に形になったのがこのおつまみスコーンです。他にも、晩酌に合うおつまみ系のものを作りたいと考えています。
甘いものが苦手な方も、甘いものが大好きな方も、みんなで一緒に楽しく食べていただけると嬉しいです。

 

新山 美穂さんが個人的に一番「売り」として推したい商品は何ですか?

キャロットケーキです。私自身が大好きで、あまり売っているところがなくて。
シナモンなどスパイスも自分で好みになるように調合して作っているので、「商品化された作品」という感覚が強いですね。

 

そうなんですね。では実際にお客様に一番人気の商品は何ですか?

実際はシフォンケーキ、レモンケーキがある時はレモンケーキがよく売れます。
個人的にはキャロットケーキもおすすめなので、まだ知らない方にもぜひ一度食べていただきたいです。

 

 

「こはるびより」の焼き菓子は米粉を使っているのが特徴ですね。このこだわりについて教えてください。

元々小麦粉も好きで、小麦粉でお菓子を作っていたのですが、米粉にしようと思ったきっかけはいくつかあります。
子どもが生まれたのが2020年3月で、コロナ禍の初期でした。当時は外出が難しく、主人も医療従事者だったので行動制限があり、子どもと家で過ごす時間が増えました。その中で、「家で作るお菓子ぐらいは、体に良いものを作りたい」という思いが芽生えました。

子どもがアレルギー体質で、卵や牛乳のアレルギーがあったことも大きなきっかけです。全てを米粉にすることはできなくても、アレルギーを持つ子どものため、そしてより体に優しいお菓子を提供したいという願いが込められています。

 

米粉でお菓子を作る難しさや特徴はありますか?

小麦粉だとふっくら仕上がるのに対し、米粉はぎゅっと、みっちり、もっちりした、目が詰まったようなものになることが多いです。特にキャロットケーキは、小麦粉で作るとうまくできるのですが、米粉だと自分の思ったようにいかなくて、かなり研究しました。米粉のキャロットケーキが世の中に少ないのは、その難しさも一因かもしれないですね。

 

起業の経緯と家族・周りのサポート

 

創業前の新山 美穂さんのご経歴について教えてください。

大学を卒業後、5年間看護師として病棟で勤務しました。結婚を機に退職し、子どもが生まれてからは、宮丸商店で1年間、橘病院で2年弱パート勤務をしていました。
現在は「QUiTTERiE」さんと「PEM」さんで週に1日ずつ働きながら「こはるびより」を運営しています。

 

 

お店を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

元々お菓子作りが好きで、「いつか自分のお店を持ちたいな」という漠然とした夢は持っていました。
本格的に考え始めたのは、去年の冬頃に自分の働き方を深く考えたことがきっかけです。
働き方への悩みを相談しているうちに、「お菓子作り」という私の武器をみつけてもらえて、周りから「お店をやってみたら?」という声が上がり始めたんです。

 

その中で、特に大きかった後押しは誰からのものでしたか?

一番大きかったのは主人です。最初は「無理だろうな」と感じていた私に、主人が「やればいいじゃん!」と力強く背中を押してくれました。
主人だけでなく、両親や兄弟、友人など、周りの誰もが「やめときなよ」とは言わず、「いいんじゃない」と応援してくれたことが、大きな自信につながりました。
周りの人たちは私が作ったお菓子を常に食べてくれていたので、その味を知っていたことも応援の理由だったかもしれません。

 

現在、お店を運営する上で抱えている課題は何ですか?

一番の課題は「なかなか知ってもらえない」です。広報手段としてはInstagramを活用していますが、それだけでは限界を感じています。
特定のフォロワー以外には情報が届きにくいので。

 

その課題に対して、どのような取り組みをされていますか?

月に1〜2回はマルシェなどのイベントに出店しています。
また、Instagramの投稿も頻繁に更新し、商品紹介や納品情報の共有、新商品の紹介などを通じて情報発信に努めています。
その他には、TERRASTAさんや宮丸商店さんなど、他のお店にもお菓子を置かせてもらっています。

 

週にどれくらいの量のお菓子を製造されているのでしょうか?また、限られたスペースでの作業は大変ではないですか?

週にだいたい150個くらい作っています。仕込みはほぼ1日で、焼きは営業前の時間などを使って集中して行っています。
特に大変なのは、焼き上がったお菓子を冷ます場所の確保ですね。
決して広いスペースではないので、たくさん焼いたお菓子を置く場所に苦労しています。

 

事業と家庭の両立についてはいかがですか?ご主人が医療従事者で、お子さんもいらっしゃる中でどのように調整されていますか?

元々主人が夜勤もあるので、どの仕事をしていても今の状況には慣れている方だと思います。
日曜は子供の幼稚園がお休みのため、
母に預かってもらうか、主人が休みの時に見てもらうなどして営業しています。
周りの協力なしには成り立たないと感じています。

 

起業して良かったと感じる瞬間はどんな時ですか?

やはり、お客様からの直接のフィードバックが一番嬉しいです。
「マルシェで買って美味しかったから買いに来た」と言ってもらえたり、誰かに紹介されてお店に来てくれたりする時に、大きな喜びを感じます。
自分が作ったものが「美味しい」と評価されるのは、本当にありがたいですね。

 

商品の改良には、ご家族、特にご主人の意見も参考にされていると伺いました。エピソードなどありますか?

はい、家族、特に甘いものが好きな主人の存在は欠かせません。
以前レモンケーキを販売していた際、国産レモンが手に入らなくなり、一時提供を中止しました。
その後、新しいレモンで作ってみたのですが、正直に「前のほうが美味しかった」と主人に言われてしまい…。
そこでさらに改良を重ね、主人から「これ美味しい」と言われるまで調整し、ようやく商品として提供しました。
自分だけだと「いけるんじゃないかな」と思っちゃうので、身近な人の客観的な評価は本当に大切だと感じています。

 

悩んだ時に一番相談するのはやはりご主人ですか?

そうですね、一番相談するのは主人です。両親も近くに住んでいて、子育てや精神面でたくさんサポートしてくれています。
将来的に夫婦でお店ができたらという夢も話していて、主人がコーヒーを淹れるのが好きなので、「コーヒーも出してできたらいいね」といった会話もしています。
家族の支えが、私の原動力となっています。

 

今後の事業の発展について、どのような方向性を考えていらっしゃいますか?

今のチャレンジショップでの運営を経て、将来的に都城市内で自分のお店を持つことが夢です。
私が育った都城市、特に現在のチャレンジショップがある周辺(天神町など)で、「こはるびより」の雰囲気に合った、小さくて可愛らしいお店が出せたらいいなと考えています。

 

お店を構えること以外に、何か目標はありますか?

はい。「アレルギーを持つ人など、食べられないことがマイナスになるようなことがあまりなくなってほしい」という思いが強くあります。
「ここにくればなんか選べるよね」と言ってもらえるような、選択肢を提供できるお菓子屋さんになりたいです。
お菓子が人々に元気を与えたり、ご褒美になったりするような存在でありたいと願っています。

 

 

今後の展望とメッセージ

 

商工会議所など、創業支援機関のサポートについてはいかがでしたか?

こんなに協力してくださるとは思っていなくて、正直びっくりしています。
創業に必要な衛生管理者の資格や、保健所の許可を得て製造場所と販売場所を完全に仕切る必要があったことなど、事業を始める上で厳しさも経験しましたが、様々な方がサポートしてくださって、本当にありがたいです。

 

最後に、これから起業を考えているけれど、なかなか勇気が出せない人たちへメッセージをお願いします。

まずは最初の1歩を踏み出す勇気ですね。私の場合は、周りの声がだいぶ力になりました。
何かきっかけで一つ芽生えてきたら、その先はなるようになるんだな、と感じています。

——————————————————————————–

 

「こはるびより」さんは、地域への深い愛情と、お菓子作りへの情熱、そして周囲の人々との絆に支えられています。
新山さんの挑戦はまだ始まったばかりですが、美味しいお菓子と笑顔をこれからも多くの人々に届けてくれるのではないかと思います。


店舗情報

こはるびより

■ 営業時間
  土・日・月曜日 11:00~16:00

■ 店舗場所
  チャレンジショップ(オーバルパティオ内)

公式インスタグラムはこちら

 

こはるびより